デジタル証券のシンガポール集中とエンタメファンド

●デジタル証券取引所 開設続々 SBIがスイス証取と合弁 日本、税制など整備に遅れ(日経電子版 2020年12月8日 2:00)
https://www.nikkei.com/article/DGKKZO67091720X01C20A2EE9000

世界各国の証券取引所が、相次いで「デジタル証券」(主にブロックチェーン上で管理される資産のうち、証券とみなされる性質のもの)の取引に進出している、というニュース。
記事によれば、スイス証券取引所(SIXグループ)、タイ証取、ドイツ取引所グループ、ユーロネクスト、そしてシンガポール取引所(SGXグループ)が先行して動いている、ということだ。

SIXグループはSBIと組み、シンガポールで2022年めどにデジタル証券取引所を開設する予定。同じシンガポールではSGXグループがIPO前の株式など対象に「iSTOX」というデジタル証券取引所を運営している(ここに東海東京グループが出資している)。

以前、「香港からシンガポールへ?」に書いたが、シンガポールはデジタル証券・デジタル資産の取引に積極的だ。
シンガポールは今の米中対立構造の中で中立(?)な拠点であり、これから世界の金融システム構造が大転換するであろう中で、デジタル証券あるいは仮想通貨(暗号資産)なども含むデジタル資産取引のグローバルハブとして完全に定着していきそうだ。

記事によると世界の非上場資産は990兆円あるそうで、その内の幾ばくかをデジタル資産マーケットが取り込むだろうという公算なので、かなり潜在的価値の高いマーケットになる。

さて、性質は企業の株式や債券に限らないが、なにがしかの資産を裏付けにしたデジタル証券の募集売出しを、STO(Security Token Offering)という。既存の有価証券とは異なる資産対象や、マイクロファイナンスとよばれる少額での発行に期待が寄せられている。
今の流れを簡単に言えば、これまでのジャンルにとらわれない様々な資金調達が可能になり、さらに、そのセカンダリーマーケットを充実させることで、幅広い投資家から資金を集める好循環をもたらそう、というものだ。

STOについては記事にある通り日本でも今年認められているが、まだ実例は生まれていない。前に「STOとアイドルファンドと徳の経済」や「金融都市構想と後期倭寇、その他」などで書いたように、日本では(一般社団法人日本STO協会での主導的役割含め)SBIがイニシアチブをとって動いている。

そのSBIが、日本では大阪に私設取引所(PTS)を設立する方向で動いており、STOで発行されたデジタル証券のセカンダリーマーケットはPTSが担う形で始まりそうだ(と思われる)。

●SBI、大阪に「私設取引所」設立へ 地銀連合の協議先は「もう決まっている」(産経新聞 2020/12/01 19:53)
https://www.msn.com/ja-jp/money/other/ef-bd-93-ef-bd-82-ef-bd-89-e3-80-81-e5-a4-a7-e9-98-aa-e3-81-ab-e3-80-8c-e7-a7-81-e8-a8-ad-e5-8f-96-e5-bc-95-e6-89-80-e3-80-8d-e8-a8-ad-e7-ab-8b-e3-81-b8-e5-9c-b0-e9-8a-80-e9-80-a3-e5-90-88-e3-81-ae-e5-8d-94-e8-ad-b0-e5-85-88-e3-81-af-e3-80-8c-e3-82-82-e3-81/ar-BB1bwhPo

SBIの大阪金融都市構想とぐるぐる」でも書いたが、SBIは大阪の堂島取引所を子会社化し、また「金融都市構想と後期倭寇、その他」のとおり「大阪・神戸金融都市構想」を推進している。

今回の記事のSBIの思惑を勝手に推察すると、STOやデジタル証券の発展に期待するSBI(北尾社長)は日本での取引をスタートし拡充させ、大阪(神戸)を「国際金融都市」としてデジタル資産取引のグローバルハブに据えたいとは思うものの、金融ジャンル(に限らないが)の規制が厳しい日本ではすぐに実現するのは難しかろう、という判断もあってのことだろう。
「グローバルに取引が発展するであろうシンガポールにも拠点を置き」ながら「大阪のPTSを拠点に国内投資家を育成し、STOやデジタル証券の浸透を時間をかけて行おう」というハラなのではないだろうか。

とはいえ、ブロックチェーンという仕組み自体が「分散管理台帳」で(安定性や即応性はともかく)取引所システムと類似するものだ。
自分などは、特にマイクロファイナンスで発行されたデジタル証券などのセカンダリーマーケットは大規模な取引所でなくてもいい気がするので、まずはSTOの種類と実例を増やしていって、PTSで投資家への浸透を図ることで、何ら問題がない気はする。

自分は8年ほど前に書いた『コンテンツファンド革命』で「コンテンツファンドによる一元管理」「コンテンツ・知財のグローバルなセカンダリーマーケット創設」などの未来を想定した。
今の流れを考えるに、STO(≒コンテンツファンド)によるデジタル証券でのコンテンツ資金調達(一定段階に進んだ企画の製作資金の調達)、セカンダリーマーケットによる、コンテンツ系デジタル証券の(いずれは、国内外の?)流通、という姿が見えてきている気がする。

デジタル証券は発行者から見れば「ファンマーケティング」に通じる可能性がある。発行者が企業であれば、そこで得る投資家の(最低限の)情報は企業のファン(=ロイヤルカスタマー)獲得に活用できると期待される。
セカンダリーについては、(株式における権利処理日など)なにがしかのベネフィット提供時のみの獲得になるのか、常時把握を許すのかは定かでないが、いずれにせよ、一定の活用は可能だと思われる。

だから、自分が志向してきた映画などコンテンツファンド、あるいはアイドルイベントなどのエンタメファンドは、1社提供の企業がいったんスポンサーとして企画を催し、それをSTOで投資家を募り、コンテンツやアーティストの吸引力を、そのまま企業のファン獲得につなげる、といった目的で発行される時代が来るように思う。
(もちろん、大規模になり関与者が増えるほど、個人情報の取り扱いは厳重なルール化が強いられるが)

自分が長年「エンタメとファイナンスをグローバルにつなぐクリエイティブ人材」として追いかけてきた具体像が、STOの先行きによって見えてくる気がして、果てしなく期待している。
願わくば、この発行者・投資家周りの“営業”に独立系IFAなどの参画が認められる方向性を期待したい(もちろん、SBIのPTSでセカンダリー投資家を獲得するなら、SBIが所属金融商品取引業者になっているIFAしか認められないだろうが)。

少し話が“矮小化”してしまったので、話をシンガポールに戻す。
多種多様なデジタル証券の取引ができる取引所があれば、多種多様な投資家が世界中から集まってくるのは間違いない。
マイクロファイナンスSTOとPTSでちまちまアイドルファンを集めるような取引とはけた違いのロット、参加者数が見込まれる。

シンガポールに先行を許すのは、保守的な日本の国柄としても仕方がないが、やはりSBI北尾氏の唱える大阪・神戸(あるいは菅政権がいう福岡を含め)「国際金融都市化」を目指してほしいものだ。
今、ちまたでは「SBIの大阪金融都市構想とぐるぐる」で予測した(?)ような、「大阪金融都市構想はSBI北尾による中共誘導策であり日本を分断するものだ」という声(陰謀論?)もちらほら聞く。
うーん。。。自分は単純な人間なので「えっ!そうかも?まずいよね」と思う“粗忽さ”も持ってはいるが、「さすがに、それはないでしょう」という見解だ。
むしろ、シンガポールがグローバルハブ化して世界、なかんずく成長するアジアの資金が集中していく中、競争に取り残されれば日本の地盤沈下が一層進んでしまうのでは、と危惧する。

日本は「よくわからないけど、このまま変わらない方がいい!」という人が多数派を占める国だろう。でも、「よくわからない。でも、このままじゃだめだ。変わらなきゃ!」にならないと、本当に、生きていくのが大変になってしまう気がする。

「大阪をシンガポールに負けない国際金融都市に!」
そんなアドバルーンをぶち上げて、新しい未来を創ることに、いち関西人として自分は賛成票を投じたいと思う。

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