●香港の社会・経済的地位変動は起きはじめている(WEDGE Infinity世界潮流を読む 岡崎研究所2020年7月23日)
https://wedge.ismedia.jp/articles/-/20221

中国による国家安全維持法の制定により、米国を中心とする反中国(自由主義)陣営と中国との対立構造がこれまでのグローバル経済を分断し、世界は大きな二つの経済圏に分割されつつあることが、国際情勢に無頓着な層を含め世界中の誰の目にも明らかに認識さることになった。
自分は特に香港人の親しい知り合いがいるわけではないが、それでも今の大変な状況には同情の念を禁じ得ない。
この記事にある通り、「国家分裂、政権転覆、テロ活動、外国勢力との結託の4つの危険な分野を避けて生活さえすれば、香港の市民も海外からのビジネスマンも何の問題もないですよ」とは言えまい。
今後、香港に見切りをつけて脱出するビジネスマンも少なくないだろう。一方で「政治は政治。経済とは別」と割り切って香港にとどまる人もいるのだろう。

ちなみに先日、香港在住のとある日本人金融マンの方とリモートでお話しする機会があったが「欧米や日本からの資金が減る分、中国本土からの流入が増えるので、ビジネス面ではあまり変わらないと思います」とおっしゃっていた。
あるいは、(つい聞いてしまったが)香港居住者にとってリモート環境では当たり障りないことしか言えない話題だったのかも?しれない。

●香港の財閥が「国家安全法」を支持する理由(WEDGE Infinity 2020年7月9日)
https://wedge.ismedia.jp/articles/-/20155

香港をめぐる情勢は、「抑圧された香港市民および支援する自由主義国」Vs「中国共産党政府及びその陣営国」という単純な対立構造ではない、という話。

昔から商人たちは天下を「はかり」にかけて生きてきた。むしろ、グローバリズムは商人たちが先導する形で発展してきたと言えるのかもしれない。

自分は今、日本の戦国時代ごろのグローバル情勢に非常に興味があるのだが、「後期倭寇」と呼ばれた商人たちが活躍していたあのころから図式は大きく変わっていないかもしれない。
(倭寇、といっても、実際には日本=3:中国ほか=7、という比率だったので、今の華僑財閥の方々の先達、といえるのかも)。

●習近平が焦る…富裕層が「香港」から逃げて、シンガポールに殺到していた!(マネー現代 7/23 8:01)
https://m.finance.yahoo.co.jp/news/detail/20200723-00074108-money_gendai-column

香港やアジア全域からシンガポールにキャピタルフライトが起きている、という記事(とはいえ前年比4割増程度?)。そして、シンガポール政府がブロックチェーン(キャッシュレス決済などフィンテック全般)に力を入れている、という内容。

シンガポールがSTO(Security Token Offering)に注力していることは、先日、この辺の情勢に詳しい知人から教えてもらっていた。
この記事にもある通り、シンガポールの政府系ファンドであるテマセクの子会社やシンガポール証券取引所がSTOによる資金調達を企業に提案するICHX Tech社に出資していて、このICHXに東海東京フィナンシャルが出資をしている、ということだった。
(このあたり、自分の古い知人も多少かかわっておられるようだ)

●デジタル通貨「リブラ」、シンガポール政府ファンドが加盟──計画変更で相次ぐ参加企業(coindesk Japan 2020年5月15日 12:09)
https://www-coindeskjapan-com.cdn.ampproject.org/c/s/www.coindeskjapan.com/62349/amp/?usqp=mq331AQTKAGYAdKh2OeBrOmNf7ABINgBAQ%3D%3D

そして、少し前だが、テマセクはあのFacebookのリブラにも参画していたらしい(知らなかった!)。
確かに、金融ビジネス自体がグローバルに大きく変化しつつある中でシンガポールがこういう動きを見せているのは、すでにグローバルハブの位置づけではあるが、彼らがより大きな地位を占めることになる前兆なのかもしれない。

いやあ、いいなあ。シンガポール(金持ちしか住めないので、今のところお呼びでないが)。

●シンガポールと中国、デジタル通貨分野で協力へ(coinpost-JP 2020/06/20 12:25)
https://coinpost-jp.cdn.ampproject.org/c/s/coinpost.jp/amp/?p=160692&usqp=mq331AQTKAGYAaKwg_fhociGArABINgBAQ%3D%3D

一方で、シンガポールは中国のデジタル人民元とも協力関係にある、という記事。
後期倭寇、いや失礼、華僑財閥含めグローバル金融のコンセンサスとしては、シンガポールを「中国陣営」「アメリカ陣営」の結節点として育んでいくことになるのだろうか。

中国は中国で、香港ではなく海南島を貿易と金融のハブに育てていく構想を持っているらしい。方や、自由主義体制国からはその構想には疑念を持たれているようだ。

●東京は香港に代わるアジアの金融ハブになれる 英専門家が見解(産経新聞WEB版 2020.7.24 09:00)
https://topics.smt.docomo.ne.jp/article/sankei/business/sankei-ecn2007240001?utm_source=dnews&utm_medium=article&utm_campaign=contentsmatch10

そして、ピーター・タスカさん! なんか、久々に見た気がする。
彼は「香港に変わって日本(東京)が新たな国際金融のハブになる」というご意見の様子。そうですか。
しかし、日本の金融市場って市場規模がでかいだけのローカル市場で、当局のお役所仕事に振り回されるから大変ですよ、って、それこそグローバルコンセンサスができていると思うのだが。

●JPX、大阪取引所を27日に総合取引所化へ 実現13年、一部先物の移管なく… 広がる海外勢との差(産経新聞WEB  2020.7.23 18:52)
https://www.sankei.com/economy/news/200723/ecn2007230011-n1.html

こんな程度のことに13年も要して、しかも道半ばだし。
(関西基盤の自分にとっては、大阪がグローバルな存在になるのはうれしいことだが)

そういうわけで、気になる記事を漁って並べてみたら、
・国家安全維持法で香港からの逃避者が増えている
・香港から国際ハブはシンガポールに
・シンガポールはブロックチェーンほか新機軸の金融ハブに
・シンガポールは中国陣営とアメリカ陣営の結節点に?
・香港の地位低下で日本にもグローバルハブ化のチャンスが
となって、「そんなこと言っても、日本じゃ無理っしょ」が結論?になってしまい、残念な感じです。

しかし、後期倭寇の時代は日本人って、商業面でもグローバル志向で存在感を見せていたはずなのだが(もちろん限られた存在だが、それでもその活躍は目覚ましかった)。今の護送船団、寄らば大樹志向の企業人たちは全くダメだよね。
日本にも天下を「はかり」にかけながら、大海に向かう志ある者がもっと現れてほしいな。

ただし、グローバルな「欲の経済」の中で戦うのは分が悪いでしょうから、日本発の「徳の経済」を広げていくのはどうだろう、と、これはいつもの我田引水。