●野村・SBI、因縁乗り越え「デジタル」で接近(Nikkei Finance 2020年8月12日 5:00)
https://financial.nikkei.com/article/DGXMZO62508150R10C20A8000000/?n_cid=NFLET001PH_20200812_a04&s=1

野村証券とSBI証券が過去の因縁を超えて「ブロックチェーン/STO(Security Token Offering)」分野を軸に連携を進めている、という記事。
具体的には野村證券66%・野村総研(NRI)34%という完全野村系だった「BOOSTRY(ブーストリー)」という会社に、SBIが10%の出資を行った、というもの。

実はBOOSTRYという会社には勝手に注目していた。以前、富士通と「デジタルアセットの、異なるブロックチェーン間や、ブロックチェーンと各種エコシステム(具体的には不明)間の相互接続をし、権利取引と決済とを担うプラットフォームサービスを提供すべく」協力していく、という記事を読んでいたからだ。

●異なるブロックチェーン間におけるデジタルアセット取引に成功(マイナビニュース 2020/05/25 16:00)
https://news.mynavi.jp/article/20200525-1042748/

ここでいう「異業種のトークンエコノミー間を連携する」という概念には非常に大きな可能性が包含されている気がする。
(新時代には近世の「両替商」が復活する?!)

とはいえ、今回はもう少し“小さな”話を。
この下の記事の中で、活用されるであろうデジタルアセットの一つに「エンターテインメント・スポーツなどのファンビジネス」という例示がある。
自分は、「エンタメとファイナンスをグローバルにつなぐクリエイティブ人」を目標に、エンタメファイナンスを軸に、ICOなど新しいファイナンス形態もいろいろと学習したり間接的に関わったりしてきた。
(現在推進しようとしている「徳の経済」では、STOは直接的には関係ないと考えているが)
以前書いた『コンテンツファンド革命』で、「エンタメファンドは証券会社のような金融サービス企業が担うべきではないか」と書いたが、その解がここにあるのかもしれない。

最初の記事で、SBI証券の常務取締役がSTOを説明する箇所で、
「アイドルのコンサートの営業収益を裏付け資産にしてトークンを発行し、握手できる権利をつけて販売する」
という一例があがっている。
このように、STOはエンタメファンドの一類型になるだろうと思う。

とはいえ、STOで発行される「電子記録移転権利」は第一項有価証券(流通性が高い有価証券)ということなので、これまで組合型(みなし有価)を中心に組成・流通してきたいわゆるコンテンツファンドと、現時点では管理上の齟齬があるのかもしれない。
コンテンツファンド組成販売を行う業者はほとんどが二種金や二種少額電子募集取扱業だが、エンタメ系STOは、一種金である証券会社などの管轄になる、ということではないか。
(それとも一種少額電子募集取扱業での取り扱いはあるのだろうか?)

自分は常々、現在の総合証券は業態シフトをしなければ生き残れない、と考えてきた。
STOを軸にクライアント周りで複数の資金調達事案にかかわり、かつ、投資家コミュニティを形成・活用する方向性は、一つの生き残りの方向性なのかもしれない。

しかし、例えば野村證券、という「看板」だけでそれができるだろうか? 今の総合証券会社の営業マンにその資質はあるだろうか? あるいは、こういった組織で投資家コミュニティを形成する行動は健全だろうか?

今はすでに、個人や小さなグループが(金融型以外でも)クラウドファンディングで直接、資金調達ができる世の中だ。
彼らが間に入ってこういう人と人を“つなぐ”動きをしようとしても、結局、お上が決めた細かいルールを組織で守らせるだけのネガティブな運営が蔓延するだけではないだろうか。

あるいは、ネット証券として直接、顧客につながった方がたやすいかもしれない。また、IFAのようにノルマで縛られない営業マンをうまく絡ませる形態について、個人的には可能性を検討してみたい。

ニュース内容に対して、少し先走り過ぎた内容だったかもしれない。
あえてもう少し“先走った”ことを書いてみる。

上の記事の「アイドルのコンサート・トークン(握手権つき)」の例。
今の資本主義原理(「欲の経済」)を起点にすれば、このような“the winner takes it all”型の商品しか考えつけないのだろう。
しかし、自分はそういった行き過ぎた方向性へのオルタナティブとして、これから「徳の経済」の生成が必要だと思う。「アドコマース」がその解決策になるはずだ。