世界に広がるデジタル証券取引と映画ファンド考

●デジタル証券の取引所連合、アジアで 東海東京が構築へ(日経 2021年11月10日 5:00)
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUB02EAX0S1A101C2000000/

東海東京がアジアをまたにかけたブロックチェーン活用のデジタル証券取引所連合を作ろうとしている、という記事。
日本で「ADDXジャパン(仮称)」を2023年にも設立し、私設取引システム(PTS)の認可取得を検討しているということ。
先日、「大阪金融都市構想-新PTSの続報と『新しい金融』」でSBI・三井住友FGのODX(大阪デジタルエクスチェンジ)について記事を書いた(このブログでは、これまで他にもSBIによるデジタル資産の新しい取り組みについて何度も取り上げてきた)。
上記記事では、ADDXジャパンがODXにつなぐ可能性も示唆している。
一年近く前に「デジタル証券のシンガポール集中とエンタメファンド」でSBI、東海東京などのシンガポールでのデジタル証券取引所の取り組みや世界の流れについて参照したが、日本国内にも還流してきているようだ。

過去記事でも書いたが、世界の非上場資産は900兆円以上あるそうで、この日経記事では、
「スイスに拠点を置くブロックステートによれば、19年の世界のSTOによる調達額は4.5億ドル(約507億円)。25年にはSTOの市場規模は8兆ドル(約902兆円)になると予測する。」
とある。

SBI/三井住友陣営も東海東京も、当初は不動産、未上場企業の社債といった、投資家フレンドリー(?)なアセットのSTOを先行し、PTSでのセカンダリーマーケットで投資家を拡大していく、という絵を描いていると思われる。
上記記事では、
「第1弾として国内の不動産会社と組み、数十億円程度の不動産を裏付けにしたデジタル証券を発行する。電子記録移転権利(ST)と呼ばれるもので、国内での発行は初めて。金融庁に対してSTを販売できる登録変更を終えており、1口1000万円で日本とシンガポールの個人や機関投資家に販売する。このSTを近くADDXに上場する。」
とある。

デジタル証券という新たなビークル(投資対象そのものというより、投資信託・匿名組合持ち分のような投資の“ハコ”)の発行・流通の流れができる、というだけでなく、最初から(原則、プロ対象とはいえ)“海外”のカネを当て込んだ流れであることも注目すべきだろう。

こういった動きは単にSBI、東海東京といった企業だけの取り組みではなく、当然、金融当局が一定の関心・関与をもって動いている話だろう(残念ながら情報を持たないので詳しくは知らないが)。
投資開示ルールなど、投資家保護に基づき発行体を“縛る手段”を持つのは金融当局なので、現在の国際基準では“厳し目”と感じられる規制先行で進むのか、それとも「新しい金融」への期待をもって、デジタル証券・デジタル資産の市場育成に動こうとするのか、期待と不安を持って眺めていきたい。
(歴史的な当局の姿勢からすれば、不安しかないのだが、さすがに「日本はこのままでは没落する」と考える国士はいるだろうと信じたい。)

さて、自分は900兆円という“手あか”のついていない各種・各国資産のなかで、なかんずく「映画」「エンタメ」にずっとずっと期待してきた者だ。
ずっと、「グローバルに金融とエンタメを繋ぐことができるクリエイティブ人材」という目標を掲げている。

昔書いた「コンテンツファンド革命 映画ビジネスと金融ビジネスの新たな関係」の中では知財の管理ビジネスとグローバル・ビジネスとして、(当時は映画ファンド=信託受益権を考えていたが)グローバルな取引所でのセカンダリーマーケットの可能性を夢想し、その際の「透明性」確保のための開示の重要性について言及した。

現在のODXやADDXの取り組みは、うまくすれば当時自分が考えていた「グローバルに金融とエンタメを繋ぐ」場所に育ってくれるかもしれない。

かなり前だが、2017年7月に公益財団法人ユニジャパンと経済産業省が主催(協力:金融庁)した「コンテンツビジネスにおける資金調達と金融商品取引法」というセミナーを聞きに行ったのだが、その際に、森・濱田松本法律事務所の弁護士の増島雅和先生が「コンテンツビジネスの資金調達とファンド管理」という講演をされていた。
そこで、例えば“分散型資金調達モデルの最先端”として「Tokenのクラウドセールス(ICO)による資金調達モデルをコンテンツビジネスに応用」といった説明がサラッとされていた。
正直、聞いた当時はICOのことすら全く知らないトーシロだったのでよくわからなかったのだが、自分が「コンテンツファンド革命」で書いたことがデジタルの世界で解決される可能性を漠然と感じた。
その後、自分がICO絡みの取り組みに参加したり(「NFTをきっかけに、これまでと未来を考える」)いろいろ勉強したりする中で、映画制作とSTOの親和性やデジタル資産(証券)と発行体のファンマーケティング活用の可能性、あるいは、イニシャルなLLPとシニアビジネスマンの活用、などについて期待が募っている。
(「SBI・三井住友FGのPTSと新たなエンタメ金融の考察」「オリラジとポケモンとSTO(雑記)」など)
これらには、たとえばNFT(Non-fungible Token)発行によるファンビジネスへの転用とその吸引力を期待するスポンサー企業への橋渡し、という可能性も加味されると思う。
(さらに言えば、ファイスブック改めメタが大プッシュする「メタバース」の世界観とNFTの親和性も、個人的には感じている。)

いずれにせよ、「エンタメとファイナンスを繋ぐ」領域の中で「金融側」に属する領域が広がっていくのは間違いない(この動きが強固な規制などで失速しなければ)。

今、国内の映画やテレビといったレガシーメディアでは、こういった動きをどうとらえているのだろうか。ほとんどの人は察知すらしていないのだろうか。それとも、水面下で何か動きはあるのだろうか。
今は外野でただ見ているしかない自分の状況にもどかしさを感じる。
エンタメビジネスも金融ビジネスも、主要プレイヤーは保守的な傾向が強い。これはオジサン社会である日本の構造問題と言っていい(「オジサンたちは変わらなければならない」「投資を考えることは人生を考えることだ」)。

先月に書いた記事「大阪金融都市構想-新PTSの続報と『新しい金融』」でも取り上げたように、少し先にはあの“大”野村(自分の世代の元証券マンはどうしてもそう過大評価(?)してしまう)がデジタル証券の「売り子」として登場してくる。その頃にはある種のデジタル証券の投資ブームがあるだろう。
玉石混交の投資対象の中で、エンタメ案件は注視されることが予見できる。

問題はその“先”だ。
2000年代に小さなブームを起こした「映画ファンド」が、結局は失速したように、投資家にとってのいい投資案件と投資環境、継続的な産業としての発展がなければ、結局はまた単なるブームで終わってしまうだろう。
(参照:「コンテンツファンド革命」)

今回のデジタル証券としてのエンタメ、という流れは、横の広がり(グローバル)も縦の広がり(ファンマーケティング)もある。
さらに、NFTにも話を拡げれば、クリエイティブ側への還元という流れも後押しされてくる(「メルカリ黒字化とIT企業経済圏とNFT。そして『新しい金融』」)。
簡単にブームで終わってほしくはない(ブームすら起こらないのはもっと寂しい)。

これに関わるエンタメ業界側、あるいはサポートする金融側も、これまでの延長線上で物を考えていては、何も“変わらない”気がする。
変化はチャンス。何が起こるかよくわからないが、変化に臨んでおこう、という姿勢だけでも持っておきたいものだ。
例えば、今、金融側にいる人は、デジタル証券を軸にした新しい流れを見越して、自身の棚卸しをしておくのもいいかもしれない。
顧客や友人などの(海外含めた)人的なつながり、有力コンテンツへのスポンサーを希求する中堅企業とのつながり等々、自分が軸になる“つながりの化学反応”を起こす可能性が見つけられるかもしれない(≒エンゲージメント)。

・・・と、いかにも「エンタメ」はいかにも来るデジタル証券の主軸であるかのような書きぶりを続けてしまったが、最後にクールダウンを。
900兆円以上と言われるデジタル証券の潜在投資先の中でエンタメはあくまで僅かなものだと思う。
ただ、自分がこのブログで常々書いてきたように、もし「金融」と「マーケティング」の領域が近づいてくるのであれば、表面的な投資金額以上の影響力を持つ可能性は間違なくあると思う。

期待と不安をもって、これからの流れを見ていきたい。

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