金融向けIT規制と日本の金融ムラへの憂慮、強い「個」の連携

●【独自】金融向けITの監督・規制を強化…日米欧当局、指針作成へ(Yahoo Japan 10/26(火) 5:00)
https://news.yahoo.co.jp/articles/465ca0cc61e5f33d65547c7426ec9c92042eff6c

主要国の金融当局で構成される金融安定理事会(FSB)が、来年1月にも大手IT企業に対する具体的な規制指針の作成に着手し、早ければ2023年度の導入を目指す、というニュース。
監督・規制の対象となるのは、AWS(アマゾン・ウェブ・サービス)などクラウド事業者やブロックチェーン、ということだそうだ。
この流れで、金融庁も国内での具体的な監督・規制のあり方について近く検討に入るという。

金融サービスとは、とどのつまりシステムなので、「システムをちゃんと運営してね」という意味合いとして、監督・規制は別段、おかしな話ではない気もするのだが、何となく“本末転倒”感が拭えなかったりする。

この記事では、「金融機関は、預金や決済を管理する基幹システムは自前で整備する一方、アプリなどスマートフォンやインターネットを活用したサービスでは、IT企業のクラウドサービスを使う例が増えている。」とある。
要は、幹の部分は自前のシステムなのでしっかり管理できるのだが、枝葉の部分は外部のクラウドサービスを使うケースが増えているので、「そのシステム、ちゃんと運営してね」という説明なのだが、みずほ銀行のシステムの壊滅的状況を見るに(当事者の方々には甚だ恐縮なれど)、素人目でも「いや~、自前システムより外部(クラウド)の方が、よほどしっかりしてるんじゃないですかね?」と思ってしまった。
国内の複数の銀行では、すでに勘定系システムもメガクラウド上に構築されている、と聞く(本チャンで使われているかバックアップ用なのかは知らないが)。
すでに金融機関独自のシステム構築やサーバー管理など、リスクの方が大きいと判断されつつあるのではないだろうか。

この記事に対するコメント欄を見たが、
「ITを監督規制するより日本の金融レガシー(全銀システム等)をどうにかせよ」
「日本の銀行はIT子会社に丸投げでいつまでも古いシステムを使い続けている」
「そこで実際にシステムを組んでいるのは下請け・孫請けの派遣社員など。だったらAWSを使う方がマシでは」
「IT子会社は銀行本体の行員と官僚の天下り先。ITベンダーとの癒着で腐敗している」
「金融業界ヒエラルキーで銀行至上主義がある限り、日本の金融の発展は難しい」
「海外のチャレンジャーバンクは日本の銀行のモバイルバンキングより安全性も利便性もかなり高くクラウドのシステム障害対策もきちんとされている」
等々、かなり厳しい意見が多かった。
正直、「やっぱりそうか」と思ってしまった。

金融は「古い」ビジネスで、少し前までシステム側を“使役”していればよかった。
でも今や「新しい金融」の時代で、巨大IT企業はその来る主役だとも目されている(時価総額だって全然、上だし)。

金融当局側が、自前のシステムが制度疲労を起こしているメガバンクなどからの視点で「システムをちゃんと運営してね」などと言えば、返す刀で「そっちこそな」「むしろIT企業視点で新しい金融システムを組み替える方が、よっぽど効率的では?」と言われてしまう気がする。

今回の記事の内容は、大きな流れとして、巨大化したグローバルITなど「私企業」を「国家」「国際規制当局」が“型に嵌め”ようとしている動きだと思う。
金融、特に銀行は「国家」「国際規制当局」が“型に嵌める”主ルートなので、その入り口から手を突っ込んで「奥歯ガタガタ言わしたる!」つもりなのだろう。かな。

自分はこのブログで再三書いているが、規制が先行する金融ムラのやり方では、「新しい金融」の可能性が閉ざされてしまうかもしれず(まあ、さりながら、金融国際規制当局が新参者のIT側に「はい、どうぞどうぞ」となるはずもないが)、金融側の“中の人”たちは、これまで通りのものの考え方、やり方では立ち行かないと持っている。
特に地銀全般や、メガバンクや総合証券の付加価値が小さい部門など、ビジネスモデルとして存在意義を問い直されつつある金融の“中の人”は、「個」としての大転換が必要だ、と書き続けてきた。

しかし、そんな中、日本では銀行(特に地銀?)が「組織」として延命するすべが用意されつつあるようだ。

●金融庁資料「新型コロナウイルス感染症等の影響による社会経済情勢の変化に対応して 金融の機能の強化及び安定の確保を図るための 銀行法等の一部を改正する法律案」(2021年3月)
https://www.fsa.go.jp/common/diet/204/01/setsumei.pdf

今般の銀行法の改正で、「デジタル化」「地方創生」などを背景に、これまで特例だった銀行業以外のスマホアプリやITシステムの販売、マーケティング・データ分析・広告展開、人材派遣などの事業に子会社・兄弟会社として手を出せることになった。
また、非上場の地域活性化事業会社に対する議決権100%の出資が可能となっている。

前者のITシステムの販売やマーケティング・データ分析・広告展開、というのは、自分がこのブログで書いてきたことを基調にすれば、むしろ、これからのビジネスのメインの側に位置する。
自分はこのブログでも「金融はe-コマースの1ジャンルに格下げになるかもしれない」と言い続けているので、こういった事業を「子会社で」というのは、銀行側の“驕り”ではないだろうか?と思ってしまう。
これが金融規制当局の“視座”であり、金融ムラの限界なんだろうな、という諦観もある(→銀行法の問題かもしれない)。

なお、後者の地域活性化事業に関する改正に対しては、(自分も大好きな「陰謀論」的な観点から?)日本の地方の優良中堅企業を外資の草刈り場にするための法案だ、と糾弾する声もある。

●なぜ地銀は地方経済の天敵になったか?改正銀行法で和製ハゲタカ化、外資も入り乱れ非上場優良企業が買い叩かれる=今市太郎(MONEY VOYCE 2021年8月12日)
https://www.mag2.com/p/money/1088652

「和製ハゲタカ化」になるのは避けていただきたいと心から願うが、地銀が抱えるゾンビ的に延命してきた融資先企業をデット・エクイティ・スワップで銀行が完全子会社化したうえで、M&AやMBOで再建する、という動きは増えてくることだろう。

経営者が高齢化している中堅・中小企業は多く、その多くは後継者不足とも言われている。
(中小企業庁は、今後、後継者不足が理由で休廃業する中小企業が増加し、2025年までに累計で約650万人の雇用と約22兆円のGDPが失われる可能性があるという試算を公表しているそうだ。)
だから、地銀がアンカーになって地方企業の再活性化を図る、という構造自体は、別に問題ないと思っている。
しかし・・・次の流れは何なんだろうか?

●「社長の右腕」候補、地方に橋渡し 金融庁が人材紹介(日経 2021年10月17日 5:00)
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUB08A1Y0Y1A001C2000000/

ちょっと前に日経に載っていた、この秋から金融庁の音頭で、メガバンクや大企業で働く管理職や専門人材を地方の中小企業に紹介する事業を本格的に始める、というニュース。
(官民ファンドの地域経済活性化支援機構(REVIC)が管理する、ということらしい)

先日、このニュースを見て、仰天して倒れそうになった。
「え? いろいろ問題ありすぎじゃないか?」

それで、ネット記事を漁ったら、そういえば、菅政権下の今年春先に同じ内容の記事が出ていて、その時も確か「いやいや、まずいでしょ」と頭がクラクラしたことを思い出した(本当に、忘れっぽくて嫌になる)。

この「地域企業経営人材マッチング促進事業」の要旨は、経営者の高齢化・後継者不足が問題視されている地方の中小企業・中堅企業と、これから「新しい金融」の台頭で人員余剰化が叫ばれるメガバンクなどの人材をマッチングしよう、というお話。
すでに6月にREVICのシステムはできており、10月から人材紹介業を担う地域銀行と信用金庫、提携人材紹介会社に無料開放した、ということらしい。

つまり、銀行法改正で「人材派遣業」も可能になる地銀は、早々に新ビジネスを得られる公算のようだ。

この記事にもある通り、
「金融庁は(メガバンクなど)大企業人材の紹介を通じ、中小の事業転換・事業拡大を後押しする」
「地域金融機関が企業側が求める経験や能力を具体的に聞き取った上で紹介」
「企業が採用すれば国から補助金が入る」
ということで・・・。

これって、お上が金融ムラの村人たちを救済し、オワコン地銀に存在意義を与え、地域経済活性化の名のもとに地方の中堅企業に余剰人材を押し付けよう、ってことなんじゃないの?
中堅企業側は、そんな人材を欲しいと思うのだろうか?

正直、ワタクシ、このニュースを読んで以降、少し「鬱」状態です。
やっぱり日本はこんな国なのか。
「護送船団」と言われた金融業界と官の根っこは全く変わっていない。
国(官)が支援するのはチャレンジャーではなくて体制におもねる人たち。
体制側の人たちはお上に“守られる”ことを信じ、変わろうとしない。
お上はきちんと飴玉を用意する。ほれ、このとおり。

今日の最初の「金融のIT規制」の記事と「銀行法改正とバンカー&地銀救済策(?)」には、直接的に関連性はない。
無理やりつなげて「整合性が取れていないのでは?」と思われるかもしれない。

しかし、最初の記事へのコメントにある“厳しい意見”を読み、後半の余剰メガバンカー救済策?を目の当たりにすると、日本の「古い」金融の敗戦構造が見えるような気がする。
「新しい金融」へと変わってゆくべき今の金融体制がこれで、ホントに大丈夫なのだろうか・・・。

いや、金融ムラの中の方々もこんな“お仕着せ”に乗っかろうとする人たちばかりじゃないだろう。
気骨のある人は、自分から地域経済に飛び込み、自分自身で再就職先を探し、自ら積極的に企業再生の提案を行うだろう。
それができる強い「個」と、同じように広くアンテナを張った「個」の連携こそ必要ではないだろうか。

今回の記事はいつもにも増して取り留めなくなってしまった。
さりながら集中力も切れたゆえ、とりあえず、この形でUPしようと思う。

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