みずほとソフトバンクの情報銀行に思う(乱文)

少し前のニュースだが、みずほ銀行とソフトバンクが共同出資するJスコアが情報銀行の事業者認定を受ける、という話が出ていた。
https://www.nikkei.com/article/DGKKZO53746110U9A221C1EE9000/(日経 2019/12/25「みずほ、情報銀行に参入。ソフトバンクと共同で」)

記事にもあったが、これまで認可された、あるいは申請を行っている情報銀行(三菱UFJ信託、三井住友信託、フェリカポケットマーケティング、電通(系)など)は、どちらかというとまだ“試運転”の様子だが、Jスコアはすでに100万人の会員を持っている。

今回の記事では、現在のJスコア社の100万人の会員のみならず、将来的にはみずほ銀行やソフトバンクの顧客基盤を連携させる方向を示唆している。これについては先行していた三菱UFJ信託なども同じ考えだったと思うが、個人的にはソフトバンクと組んだみずほの優位性を感じる。

このブログでも時々注目してきた(ここここここ)が、情報銀行というのは、個人データ、つまりいわば個々人の行動や考えを反映した多くの情報を企業マーケティングに活用させる接着点のサービスで、その対価がデータ提供した個人に還元されるビジネスモデルだ。その運営のためには適正な個人データの管理力と、データ提供先の企業の精査力が要求される。

Jスコアの場合、AIで信用スコアを算出し、そのスコアに応じた特典やサービスが享受できるというもので、将来はみずほ銀行の決済データなどを適正管理の上、提携先企業のマーケティング等にも提供し、顧客はその対価をもらうことになるのだろう。
まさに中国が先行し普及しているアリババの「芝麻(ジーマ」信用」テンセントの「テンセントクレジット」を倣ったものといえるだろう。

中国は今や金融関連ビジネスのIT化が最も進んでいて、日本の金融業界は取り残されている感がある。同様に中国はQRコード決済がいきわたり、日本や欧米では銀行や金融機関が担っていた業務が多くIT系企業が運営する形になっている。
日本でも各銀行はQR決済サービスを行う企業と業務提携を行いだしているが、銀行の“中の人”は「あくまでも一つの勉強として」というやや消極的なスタンスのようにも見受けられる。
実際、先日立ち話したとある地銀の人は、「日本は高齢者が多いので、電子決済が主流になるにはまだ10年かかると思いますよ」と言っていた。

日本では現金至上主義の人がまだ多いが、世界を見るとむしろ少数派で、電子決済の比率が非常に高くなっている。例えば、現金流通が多い日本はATMや両替機のニーズがあるが、電子決済が主流になればそういった機械は不要になるし、銀行内の資金決済周りで働く人々は不要になっていく。企業としての銀行にはいい話だが、従業員は職を失うことになる(とはいえ、今でも銀行の店頭はほぼ皆が派遣社員で、コストカットは進んでいるのだが)。
中国でもまだATMのニーズはある、という声もあるが(参考:昨年の富士通子会社による記事 https://www.fujitsu.com/jp/group/fri/knowledge/ideatank/2018/2018-12-3.html)、そんなに安穏と構えていて大丈夫なのだろうか。あちらとこちらでは時間の進み方がまるで違う。
もちろん、日本の銀行や金融業務従事者の中にも危機感を持っている人は多いと思うが、時代の変化は我々が思うよりはるかに速く、日本は取り残されるリスクがある。
よく言われるが、中国は個人情報保護の概念が薄くその情報は最終的には国家、つまりは共産党に集約されるともいわれる(一方、その他へのデータ移転についてはしっかりガードしている)。AIの進化のカギは大量のビッグデータと言われ、その面では日本や欧米はじめ先進国に比べ格段に優位な位置にあるともいえる。

一方、欧州ではGDPRを施行し個人データを個人固有の権利としてその流通に制限をかける方向でシフトしている。アメリカでもGAFAはじめ巨大IT企業は、これまでのデータ独占から個人データをしっかり管理し、使用用途をしっかり開示し個人から許諾を受ける方向に流れが変わり始めている。
今年のG20でも個人データ流通の国際的なルール整備が議題に上がっており、議長国だった日本が推進を始めた情報銀行(情報信託機能)の行方がどうなるかは様々なところで興味を持たれているだろう。

「情報銀行」(あるいは「情報信託機能」)という名前からか銀行からのサービス参入が多いが、個人的には、その動きには疑問を持ってきた(参照、昨年のブログ)。むしろ、データベース管理のシステムを提供するIT企業や(―①)、様々な企業とのマッチングを生業とする企業(―②)がそこを担うべきであるようにも思う。
ブログで以前書いたが、(世界的に悪名高い?)金融当局による検査監査で縛りを入れられるように、信託という形態をとりたかったのではないか、といううがった見方もしている。
実際、情報銀行では個人情報提供の対価としてサービスなりポイントなりを提供し、そのポイントは現金化できる場合もある(実際、電通系のマイ・データ・インテリジェンス(MDI)は複数のキャッシュ交換可能な決済手段との互換性をうたっている)。大きなくくりで「金融」のルールで縛ろうと思えば強引にできなくもない、と思っ(危惧し?)たりもする。

よくわかっていないままで僭越だが、個人的には①と②の機能を分け、②のマッチング企業にシステム提供するIT企業を個人情報を管理するカストディーとして①とし、②には銀行だけでなく、e-コマース含む様々な事業者が名乗りを上げるような形態がわかりやすいと思う。
つまり、データ管理はシステム管理能力の高いIT系のみとし、マッチング・ビジネスは銀行はじめ流通系でtoCを行うすべての顧客関連ビジネスが対象で、SNSなどのビジネス形態もそこには含まれるかもしれない。
この場合、①とつながるすべての②のマッチング・ビジネスの主体は、KYC(顧客の本人確認)など一定のルール化の下に置かれなければならなくなる。銀行もQR決済手段やポイント提供するSNSなども、統一されたルールに縛られることになるのかもしれない。
電子マネー・少額なら現金と交換が可能な各種ポイントは、(すでに資金移動業や電子決済等代行業などの縛りはあるが)主に銀行が縛られている法定通貨の決済にかかるルール側に縛られていくことになるのかもしれない。その場合は仮想通貨(暗号資産)についても同じ方向性になっていくことが考えられる。
現在、手を挙げているすべての情報銀行が電子マネー的なものとの交換を考えていないかもしれないので、すべてが金融側のルールに縛られる、というわけではないかもしれないし、「決済手段」と「個人情報」はあくまでも別のテーマなので、それらを混同してはいけないけれど。
なお、こういった考えは、マネロン対策を考えると妥当にも思えるし、逆にすべての決済サービスに公的機関のチェックが入る状態というのは、健全ではないという気もする。

さて、このところ銀行や証券会社などの既存金融機関で働く従業員の閉そく感が語られて久しい。与信行為や金融商品ないし保険商品の販売といった現行のビジネスは、今後どんどん人間の手を離れ、AIの発達に伴い、上記の情報銀行などをベースに収集された個人のビッグデータを解析したうえで個々人に適正と思われる提案を自動的に行うようになってくるだろう。
つまり、これまで顧客回りの仕事や与信や販売の管理などにかかわってきた多くの金融事者は実質的に職を失うであろうことが見込まれる。必然的に金融機関自体がこれまでとは形を大きく変えて、e-コマース全般の中に集約されてしまうのかもしれない。
取り扱う商品やサービスが何かにかかわらず、データ管理ビジネスが中軸にあり、e-コマースそれに連なる形で複数存在する一方で、横ぐしをさすようにSNSのような横断的なコミュニティーサービスがますます存在感を増していくように思う。
そして、それぞれの新しい形の“共同体”や“経済圏”に関与する人たちの決済行為を共通化させる方向に行くようにも思う。
例えば現在、メルカリは「中古品CtoCマーケット(コミュニティ)」を作り、その基軸通貨たるメルペイを擁し世界市場を開拓しようとしている。そういった様々な“共同体”や“経済圏”が、国内のみならず世界をまたにかけた形で、これから様々にできていくのだろう。

さて、では今後、職にあぶれるであろう金融ビジネス従事者はどうすればいいのだろうか。当然、置かれた立場や能力は人それぞれに違うので一概には言えないが、一言でいえば、様々な経済圏が形成される過程で、「ハブ&スポーク」でいう「ハブ」になるよう努力して動かなければならないのではないか。
まだ人と人とのコミュニケーションには“ハイタッチ”(face to faceでのつながり)が求められる要素が大きい。
例えば今、証券会社では野村證券やSBI証券などが地銀と組むなどして、顧客紹介ビジネスのウエイトを上げようと模索している様子だ。だが、そうやって「組織」が顧客を囲い込むようなやり方でうまくいくだろうか?
自分は、結局「組織」ではなく「個」あるいは「個」の連携がそれをできるか否かが重要なのではないかと思う。
例えばプライベートバンカーなどがそうであるように、金融商品販売に限定されない様々な“魅力”を携え、ハブとして人と人をつなげて(engagement)、人にできない付加価値を提供することで厳しい生き残り競争を戦っていく必要があるのではなかろうか・・・とはいえ、それだってAIによるone to oneマッチングが当たり前になった時代には無用の長物となり果てるかもしれないのだが。

「情報銀行」のニュースを入り口に、いささか脱線した感のある、まとまりのない文章になってしまった。情報銀行については、まだ自分も十分把握できていないところもあるし、考えがまとまらないままで書き出し、その結果、よくわからない内容になってしまったかもしれない・・・反省。

最後に。
自分がいま進めている新ビジネスの目的は「“徳”の経済圏」という新しいマーケットとコミュニティを作ることで、それはある種の「未来の金融ビジネス」の一つの姿かもしれない、と思ったりもしている。
自分が金融機関出身者だから我田引水したいだけなのかもしれないが。

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