『データ覇権争いと日本』からの雑感

昨日の日経に、『データ覇権争いと日本』という記事というか社説があった。トランプ大統領が仕掛けた貿易戦争の陰で、米・欧・中の「個人・企業のデータを誰がどう扱うか」に関する覇権争いが始まっており、取り残されつつある日本も周回遅れでその競争に参加しようとしている、というものだ。

GDPRで欧州とFANG(10/15修正:FAANGあるいはGAFA。以下同様)がいがみ合う一方で、中国はデータを国家管理する方向で世界を制していきかねない。なので、日本がいがみ合う米と欧をとりまとめ、ルールメーカーとなって主導せよ、というわけだ。

 

なるほどなるほど。そうでしたか。

まあ、政治のことはよくわかりませんので、軍事・外交上の戦略としてはそれもアリかと思う反面、「日本政府がこの分野でいったい何ができるというのじゃろ?」と思わなくもない。で、具体的には、経団連がデジタル省の設立を上奏していたり、相変わらずの“「官民一体で」の大号令”を期待している様子だ。

それが間違いだ、などというつもりはないんですよ。でも・・・それでは肝心のグローバル競争に勝てないのではないですか? とは言いたい。

 

正直、自分は現在、日経平均が20数年ぶりに最高値を更新している現状がよく理解できていない。たとえば、アメリカはこの10年程度で、時価総額上位銘柄がGEや金融勢からFANG系にガラッと入れ替わった。日本は“レガシー”大企業が常に上位だ。では、日本の大企業が(現在、米系の上位企業がそうであるような)グローバルに影響力を持つプラットフォーマーになっているかといえば全くそうではないし、最近、世界を変えるような画期的な商品・・・古い話で恐縮だが、昔のSONYウォークマンのような、を生み出して世界中に広めているか、といえばそうでもない。

日本のIT企業大手の多くは、ゼネコンと同じように“看板”で大企業や公的な仕事を取ってきては、下請け・孫請けに出すようなビジネスモデルのところだし、ソフトバンクなんか(10/15修正:なんか→あたり)が評価されているのは、自社技術でというよりはM&Aで買い漁ってきた主に海外のイノベーティブな企業が持つ技術への潜在評価だ。

 

日本にも生きのいいベンチャー企業が存在するが、中国の深圳のそれとは比べ物にならないほど層が薄いと聞く。これはもちろん、国の規模・人数の差が大きいが、それ以上に、「よくわからないけど、それ面白そうだから出資するわ!」というベンチャー投資家の存在やベンチャー周りの投資環境が中国に比べあまりにも薄いからだ。

「官民一体で」の大号令の先に、どの程度ベンチャー市場に向けた眼差しがあるのだろうか? これまで通り、ほぼほぼ無い(有ったとしても、これまでどおり公的にオーソライズされた“肩書き”のある方々のお墨付きを得た案件しか投資対象にならない)のだろうか?

もちろん、日本の大企業にも(あるいは大企業“こそ”)優れた技術力や優秀な人材が集まっているのは百も承知だ。しかし、これまでもそうだったが、“「官民一体で」の大号令”は、いろんな理由でうまく機能してこなかった。

どういうわけだか、大企業にいらっしゃる優秀な方々は、細かい技能向上やわずかでもより良い成果をもたらすための“すり合わせ”や“合意形成”に時間をかけすぎるきらいがあり、今のグローバルビジネスで最も要求される“スピード”についてはおろそかになる傾向がある・・・などと言われ続けてん~十年だが、これが一向に改善される様子がない。

 

だから、“「官民一体で」の大号令”などという昭和の遺物的な方法論(永野健二さんの『バブル』でいうところの「渋沢資本主義」)では、日本はもう勝てっこない。散々それを経験してきてまだやるか? という気がする。

 

むしろ、ピーター・ティール(くらいしか知らないが)が日本に現れるような政策を打ち出してくれ! 海外逃避した富裕層が国内還元してベンチャー企業に投資したら、ノーペナで一定割合は課税対象外にする、とか。

 

本当は、キャッシュリッチな(内部留保を貯めに貯めた)大企業がベンチャー投資するのもアリなはずで、実際、M&Aや大企業が組成する投資ファンドの数は増えている。しかし、正直、これは色々と問題ありだ。

実際、買収されたベンチャー企業では、“天下り”役員など親会社からの変なプレッシャーでごたごたするケースも少なくないと聞く。これは、サラリーマン経営者やサラリーマン(が責任者になる)的ファンドでは“肝力”のある権限移譲ができず、ついつい介入ししまいがちになるからではないか? こういう、人間の、関わる立場におけるメンタリティの違い、というのはおろそかにしてはならないのではないだろうか。

 

大企業やお役所というものは、なぜかことさらディテール優先で物事を進めたがる。まあ、一言でいえば「細かい」。また、様々な人が集うプロジェクトにおいては人事面や人のポジション・肩書き云々を問題にすることもままある。

上記の「デジタル省」開設云々で、「この件でA社の〇〇さんとB社の××さんとX省の△△さんに根回しをして・・・」「手土産に将来Y省の方がお働きになれるような座席を用意して・・・」などなどしている間に、周りの国々はすっかり先に進んでしまっているような気がする。

 

だから、日本にも少しは存在する功成り名遂げた成功者たちを海外に逃げさせてしまうくらいなら、渋沢翁とは言わないが、「未来の日本の産業発展に資するため、ぜひご尽力ください」などと、お上も経団連も彼らを持ち上げてあげて、何なら政策立案への関与もさせてあげては、と思うのだが、それは難しいのだろうか?

 

・・・なんとなく、これまで書いていて、「個人情報管理への“官民一体の大号令”」という入り口と、「ベンチャー投資環境を充実させよ」という出口は、自分で書いていてもちょっと趣旨違いな気もするし、むしろ、この前に書いた“「情報銀行」か「VRM(企業関係管理)」か?”といった流れのほうが“筋”だったかもしれないが、、、これらは大きな目で見ると“つながっている”課題なのだと思う。

 

(まったく別?の話)

先日も情報流出リスクの件でディスられまくりのFacebook。同社はプライバシー管理のためにブロックチェーン(分散型管理台帳)を利用する可能性も打ち出しているようだ。

もし実現すれば、一気にブロックチェーンにおける管理対象者や利用事例が増え、定着化が見込まれる。そんな時、日本のこの分野での世界におけるポジショニングはどうなっているのだろうか?

ブロックチェーン=仮想通貨、と連想するのは短絡的すぎるが、数々の仮想通貨取引所の不祥事とICO案件の停滞で、今現在、この辺りがネガティブ視されすぎていないだろうか? 杞憂であればいいが。

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