●AR・VR特許の競争力、Microsoft先行 メタバースの要に(日経 2022年3月7日 2:00)
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUC166CE0W2A210C2000000/

先日、「コール・オブ・デューティ」や「ウォークラフト」など人気ゲームを手がける米ゲーム会社アクティビジョン・ブリザードを7兆8000億円で買収したマイクロソフトがメタバースに通じるAR・VR系の特許獲得数で世界トップを走っている、という記事。日経新聞社とパテント・リザルト社の共同調査より。
メタバースに賭けフェイスブックから社名変更したメタはと言えば、グーグルとほぼ同数で6位。
そしてなんと、日本が世界に誇る我らが(?)ソニーが、彼らを上回り第3位だという。ソニーは先日、ホンダとタッグを組んで自動運転の世界でも存在感を示しつつある。
2位は米マジックリープで、同社はNTTドコモやグーグルから出資を受けているそうだ。

ゲーム大国の中国企業が見当たらないのが不思議だが(記事内に特記なし)、いずれにせよ、今後10年ほどの間に、世界中でインターネット上に多数の生活・社会空間が、仮想空間メタバースを通して構築されてくる。

映画『マトリックス』が描いた社会基盤ができるのかと思うと恐ろしくもあるが(同作品では仮想現実空間で生きられる代償に、支配者AIに電力供給する器官として人類が存在する)、仮想現実に生きることで充実感や自己肯定感を持つ人たちは多いだろう。自分もその予備軍なのかもしれない(お気楽な異世界転生ストーリーも好きだし、現実はつらいしなぁ)。

手つかずの新大陸がボコッボコッと現れるわけで、そこでは様々なビジネス、経済面での期待も寄せられている。
NFT(Non-Fungible Token)やメタバース内で取引される貨幣、メタバース内の不動産などを利用した投資や利殖、といったものに期待する人も多く、すでに「サンドボックス」(使用通貨SAND)など、投機的に人気化しているものもある。

●メタバースの扉は開いた 起業家や識者に聞く フィリップ・ローズデール氏/中村裕彦氏/増田雅史氏 時論・創論・複眼(日経 2022年3月7日 2:00)
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOCD25A190V20C22A2000000/

こういったまだ未成熟なメタバースという存在に対し、識者が様々な意見を述べている。各々が持つメタバース像がバラバラなため各人の論点は統一されていないし(それだけ、幅広い発展可能性が有るということだ)、特に目新しい内容ではないが、納得するところがある。

「監視されたり情報操作されて、分断の場になるべきではない」と倫理的な主張をするのはフィリップ・ローズデール氏。
この記事のまとめ(アンカー)でも、「倫理と収益を両立できる仮想社会運営のモデルも見えない」が、それゆえに日本企業にも世界的プラットフォームを築ける可能性が残っている、と結んでいる。

そこで、このブログ記事の表題「メタバース社会でこそスラマット(徳の経済)は生きるはずだ!」の主張(我田引水)である。

自分が長らく実現を目指し、いったん諦めてしまった「スラマット(Selamat!)」や通底するアドコマース・徳の経済という概念こそ、新たなメタバース社会で花開くものではないだろうか。
(過去の経緯については、2021年8月25日『NFTをきっかけに、これまでと未来を考える』を参照)

様々なメタバース内で、取引される「商品」がある。これは、サンドボックスの土地や戦闘ゲームでの武器等のアイテムなど、様々、無限にあるだろう。ゲーム内でのプレイヤーの実演も商品になるなら、そういったサービス業的な商品もありだ。
その個々の商品を「広告媒体」として認識し、個人法人問わず「広告」(=「応援」)を求める。
スラマットで元々考えていたのは、「広告媒体」と「応援」を仲介し、かつ応援の結果、商品の単価が下がるよう連動させること。そして、応援者間の(RTBの)競争、応援者の実績が広く開示されること。
それにより、
「自分(購入者)が誰のおかげでこの商品を安く買えたか」
「応援者がどういう応援を継続しているか」
を衆人が認識でき、広告や自己PRの場として活用できる。

その後、「閉じた世界(一つのプラットフォーム)ではうまく行かない」と気づき、こういった「応援」を様々なプラットフォーム間で紐づけできるべきだ、と発想。
暗号資産のように投資して得るのではなく、また、一つのプラットフォームで利用する通貨ではなく、あくまでも、応援の実績として「ご褒美」がもらえる(徳のトークン『TOKU』)という仕組みだ。

広告代理店的なリソースだったり、応援を商品価格に反映させるシステムだったり、あらゆるものがない中で絵空事だけを唱えても、実現には程遠いチャレンジではあった。それでも様々な先に語る中で、スラマットが目指す「理念」だけでも広めて、巻き込めないか、と考え動いていた。

現状、依然としてまったく同じ状況なのだが、それでも、このスラマットのサービスは、複数のメタバース社会を繋ぐ(プラットフォームを超えた)、世界的なビジネスに発展できるものだと思う。
上記日経記事が言う「倫理と収益を両立できる仮想社会運営のモデル」として、日本が世界に打ち出すべきものこそがアドコマースであり『徳の経済』なのかもしれない。

正直、現在、NFTやメタバースの世界で起きていることは、結局は現実の資本主義社会の焼き直しで、金を持つ者が正しく、弱者を蹂躙して良い「太客(ふと客)」社会だ。
自分もその資本主義的価値観の中で「暗号資産、儲かるかも」「NFT、儲かるかも」と考えている側面があるので、あまり偉そうには言えないのだが、狂乱するNFTやメタバース内の土地取引を、やや冷めた感情で眺めてしまうことがある。

むしろ、これから勃興する“新しい世界”には“新しい価値観”を植え付けていけないだろうか。
元々、スラマットの取り組みで漠然と思っていたのが、
「資本主義の下、世界は貴族と奴隷と芸術家に集約される」
「でも、皆が芸術家になり『応援』される社会なら、奴隷の数は極小化し幸福な社会ができる」
というものだった。

理想論、と言われるか、あるいは、
「そんな世界が実現できたとして、結局そこでデータを握って稼ぎたいんでしょ?」
と見透かされる(?)かはわからないが、
「メタバース世界にこそ、『徳の経済』が必要だ!」
と、ここに強く記しておきたい。

注)この文章はあくまで意見表明であり、今から自分がすぐ、こういった何らかの事業に取り組もう、ということではないので、悪しからず