ゼロベース思考:コロナとカラオケ

●カラオケ業界が「もう限界」 閉店500店超す(Yahooニュース 9/17(木) 11:00)
https://news.yahoo.co.jp/articles/2213973f1b5ed1326c1462280055f7bd72c3e716

コロナ過でカラオケボックスが窮地に陥っている、というニュース。
カラオケでの飛沫感染リスクがクローズアップされ、記事のとおり「1970年代にカラオケの歴史が始まって以来、最大のピンチです」(都内でカラオケボックスを経営する男性)ということらしい。
一人カラオケ(ヒトカラ)需要すらマイクやソファーなどからの感染を懸念して、戻っていない様子だ。長らくレジャーとしてカラオケを楽しんできた身なのに非常に心苦しいが、確かに今、カラオケボックスに行くのは勇気がいるかな。
コロナ問題発生以降、多くのカラオケボックスが、「歌わないで!」を前提に「テレワークスペース」としての使用を喚起してきたが、密閉型の個室ではなかなか浸透しないのかもしれない。

業界の方には申し訳ないが、あくまでもシミュレーションとして「今後のカラオケボックス/カラオケビジネス」について考えてみる。

<カラオケボックス>
利用者目線でカラオケボックスの利点を考えると、「密閉性が高く大きな音を出しても問題ない」「(場所によるが)駅前など便利な場所に立地」「フリードリンクなどサービスが充実」「通信を利用した映像再生・音響装置」などあげられる。

欠点は一言でいうと感染リスクが高いと言われるカラオケ利用に特化して(原則)いること。とはいえ、すでに『ヒトカラ』(グループ利用に比べると低リスク)、『テレワーク用個室』、『楽器練習スペース』などの個別ニーズに沿った“亜流”利用への開放が行われている。
なので、施設としてのカラオケボックスを見た場合、「カラオケ以外」の利用がどれだけ可能になる(≒業界のしがらみを超えて開放される)かが、再生のポイントになるのではないか。

以前、ここ「『コンテンツ・イズ・キング』は幻か?⑧」および記事内リンク先の「新たな“映画を観る”ためのシステムと新ビジネス提案(素案)」に書いたように、自分は映画ビジネスの進展系として、カラオケボックスや(お金持ちの)個人宅も含めた映画鑑賞の「場」をつないだビジネスモデルを考え、周りにアプローチしたことがある。

(9/18追記:資料に明確に「カラオケ」への言及はなかったかも。この資料の基になった『コンテンツファンド革命』の第五章「変化の兆し」第1節「デジタル化・・・」の中には言及がある)

当時は劇場映画のような「一方向」の映像コンテンツの視聴のみをイメージしていたが、例えば今のカラオケには遠隔地にいる人とのデュエット機能や録画機能など「双方向」サービスもある。「新しい映画」たる映像コンテンツの幅は広がるだろう。
「映画」に限らず「ライブ動画」も対象化されるだろうし、Youtube(?)で人気がある「ゲーム対戦」「ゲーム実況」などももしかしたら利用可能かもしれない。
(9/19追記:つまり、目指すは「『コンテンツ共用』ができるエンタメ・レジャールーム」だ。)こういった「コンテンツの共用ビジネス」は権利面でのハードルが高いと思うが、新しいグローバルビジネスモデルを実現できるチャンスと思い、業界横断的にサービスを検討できれば、と思うのだが。
せっかく日本は、
・カラオケ/カラオケボックスの発明国
・映像機器など電機メーカーが優秀
・“家視聴”市場は完全にYoutubeやNetflixなどに敗れてしまって、後がない
のだから。
コロナを機に各種カラオケ機材(9/19追記:(=エンタメ複合機材))もカラオケボックスに限定せず、家庭や公民館など広く設置できるようになれば面白い。
流通量が増えれば、リース→中古市場での(節税メリットも狙った)「ファイナンス市場」がグローバルにできるかもしれない。
(ただ・・・ブログ記事に書いたように、日本は結局、“黒船”じゃないと動かない気がするが)

<カラオケビジネス>
とはいえ、歌を歌うことは人間の根源的欲求であり(と、自分は思っており)、カラオケ需要は縮小こそすれ、完全になくなることはないはずだ。「テレワーク飲み会」のように、通信上でつながったカラオケ体験の需要は喚起されることだろう。
すでに家の中でパソコン画面経由で離れた友人たちとカラオケを楽しんでいる人もいるかもしれない(あるいは、音漏れを気にして各々が自家用車にこもって“歌合戦”をしているかも)。

例えばDAMやJOYSOUNDは、すでにテレビ・ゲーム機・パソコンなどで利用できる有料カラオケサービスを展開している。
また、カラオケ業者以外でもスマホ上には複数のカラオケアプリがあり、カラオケボックスにある採点機能などは普通に整っている。
簡易的にはSpotifyやAmazon Musicなど人気のサブスクサービスには歌詞表記機能があるものがあり、それをカラオケ代わりにすることもできる。また、Youtubeを探せば多くのカラオケ音源が載っている(違法アップロード?)。

お金持ちの中にはカラオケ設備・防音対策完備の「カラオケ部屋」を設けている人もいるようだ。前述のとおり「映画」「ゲーム」兼用で“自宅内エンタメ施設”のニーズは増えていくだろう。
さすがに防音工事費だけで200万円もするようなので本格的なものはお金がないと無理だが、我々庶民には、段ボールの簡易防音設備という手もあるかもしれない。

テレワーク用の防音ヘルメット、というものがあるらしい。残念ながら、もっぱら周りの雑音を遮断して仕事に集中するためのものだそうだが、もし「歌唱可能」な防音ヘルメットができれば、世界的にヒットするのではないか。
(呼吸・視界・適温を確保して防音を達成するのは困難なことだろうが)

Youtubeには歌をうたう素人さんたちの動画が数多くupされている。多くはカラオケボックスでヒトカラしているのを撮ったもののようだ。こういったニーズは継続して存在するだろう。この録画場所もカラオケボックスから自宅や車中に変わってくるかもしれない。
さらに歌自慢の人はわざわざスタジオを借りて撮っているし、アカペラや楽器演奏を交えたものもある(自宅をスタジオ化するニーズはこういう歌自慢・演奏自慢の方々に支えられている)。
本当に才能のある人はその中でぐんぐん注目を浴び、例えば藤井風のようにプロデビューしたりする。ただ、あくまで彼らは頂点であり、もっと“草の根”の、例えばおじさん・おばさんの“ちょい上手さん”たちが狭い範囲で評判を得たりしている。
カラオケ好きでYoutubeにupしている人がほかの人の曲のコメント欄で「自分も歌っているのでよかったら聞いてください」とリンクを貼って自己紹介しているのを見ることも多い。

ここには、歌好きたちが「発表し」同じ歌好きや歌を聴くのが好きな人たちと「つながる」ニーズがある。これは漠然と「歌」でつながるケースもあるし、「歌手」「楽曲」が好きな者同士がつながるケースもある。
この傾向は日本だけではない。例えば、今、日本の80年代シティポップが世界的に大流行しているが、「竹内まりやの『Plastic Love』を歌ってみました!」という外国の人たちがたくさんいて、その動画のコメント欄ではグローバルにファンがつながっている。

では、これが“ビジネス”になっているか、というと、残念ながらそうなってはいないだろう。楽曲の権利者にとってはほぼ違法演奏(歌唱)・違法アップロードで収益機会はない(きちんと申告し広告費をレベニューシェアしているケースもあるのかな?)。

この「違法演奏(歌唱)」のところを何とか「合法」に変えられないか。
例えば、自分がカラオケ業者なら、海外富裕層向けに自宅用カラオケ設備の海外展開にチャレンジしたいだろうな、と思う。
その後のYoutubeへの違法アップロードは目をつぶるとして、ドレスアップされた合法演奏(歌唱)に録画機能を提供するニーズは世界的にあるはずだ。

一方、違法演奏(歌唱)の壁は高い。極端に言えばスマホが1台か2台あれば(カラオケ演奏・歌唱と録画)Youtubeにアップするに十分な動画が撮れてしまうからだ。
残念ながら、ニーズがある以上、権利者目線で「歌唱動画を録画するのはやめて」とは言い続けられないだろう。楽曲の権利者が強い今の著作権が古くなりつつある所以だ。

<カラオケ派生ビジネス>
むしろ、世界中にいるカラオケファン/音楽ファンを“取り込んだ”新しいビジネスを模索することを考えた方がいい。
例えば、今、テレビでは“歌上手さん”を集めたカラオケ番組が人気だ。権利者目線でいえば、これはネット上でもキラーコンテンツになる。
例えば、松原みきの『真夜中のドア/Stay With Me』の権利を持つSony Music(?)が、全世界の『Stay With Me』ファンを対象に「ネット上のど自慢大会」を企画する。当然、リアルに人を集めたり、同時に歌唱させるイベントを開催する必要はない。
すでに違法アップロードされた楽曲を含めYoutubeその他の動画へのリンクを使って“のど自慢”たちを集めるのだ。
審査はAIを使ってもいいし、有名人に審査させても、観客の“いいね”ベースでもいい。この「番組」にスポンサーを集めて、上位者に賞金を渡す、というやり方で歌い手を増やしてもいいだろう。
人気楽曲であればあるほど、集客力はあるし、スポンサーにとって広告価値は高いはずだ。

あるいは、この「ネット上のど自慢大会」を都度都度行えるサイトを運営できないだろうか。Sony Musicやユニバーサルミュージックなどに楽曲提供をしてもらい、「今回は『Stay With Me』第36回目のコンペです」のような感じで期間を区切って、楽曲ごとにコンペが行われるのだ。そして、都度都度、スポンサーをマッチングさせる。(9/19追記:今のカラオケさながら様々な楽曲が対象になり、不人気楽曲にはスポンサーがつかないだろうし、)当然、マイケル・ジャクソン『スリラー』なら膨大な広告収入が入るだろう。(9/19追記:そして作詞・作曲者などの権利者はこの一部を受け取ることで新たな収入源となる。)
また、無料・有料の会員制にすれば、フィービジネスにもなるし、何より顧客データを使ったマーケティング利用の可能性も広がる。

権利処理、歌唱者の本人確認、動画の審査方法、等々のさまざまな要解決点はあるが、こういった“まっさら”なビジネスを始められる好機なのかもしれない。

以上、カラオケボックスの苦境を起点に、ゼロベースで考えてみた。
上記「新たな“映画を観る”ためのシステムと新ビジネス提案(素案)」に書いたように、音楽ビジネスは“つながる”“まつわる”ビジネスに変わってくると思うので、この「ネット上のど自慢大会」サイト案は、案外と「10年後の馬車→自動車」になっているかもしれない。

(最後に我田引水。このブログ記事では最後にこれを書く決まりなので)
これが達成された世の中では、クリエイター・表現者のすそ野が広がっている。彼らのファンが支援者となり、クラウドファンディングでなにがしか金銭的支援をするケースも多いだろう。
そういった支援者も報われる「徳の経済」のニーズは根源的に大きいはずだ。

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