長らく定期的に出席させていただいている「読書会」があり、いつも様々な“気づき”をいただいている。
今回の課題図書は『京大的アホがなぜ必要か カオスな世界の生存戦略』。
自分は科学的でアカデミックな素養は皆無だが、いろいろと面白い内容だった。

浅薄な自分が要旨を語るのはおこがましいが、この本の肝は、こういうことかなと思う。

・世の中(特に自然)は、何らかの因果律により成立する合理的な「樹形図構造」ではなく、例外などのわずかな条件のズレが結果を大きく変える『カオス』である
・『カオス』には「樹形図構造」とは異なる秩序がある
・無秩序から秩序を生む段階のある臨界点を超えた状況で「相転移」が起こり別の相に変わる。ある秩序が、ある臨界点で「逆相転移」し別の相に変わる
・自然界を含む自然発生的ネットワーク(=複雑ネットワーク)は、正規分布つまりランダムな確率に支配される(公平な)構造ではなく、べき分布、つまり不平等性があるスケールフリーなものである
・「モテる奴はわずかで、彼らはモテるからモテる」。ただし適応度が強いものはその世界の中で逆転ができる
・ランダムネットワークよりスケールフリーネットワークのほうがトラブルに強い(一方、恣意的な攻撃には弱い)
・合理的な「選択と集中」は×。教養や雑学や趣味、無駄やガラクタなどの“多様性”はスケールフリーな社会では非常に重要(思いがけない「裏道」につながる)
・だからこそ、「アホになる」つまり人と違うことを気にせず、とことん面白がって探求する必要がある

ご自身が現在の大学効率化という“合理的な”流れに抗しているため、著者のやや我田引水なところも感じられるが、むしろその部分が、現在の自分の状況をフォローしてくれるような印象があり、なんとなく勇気づけられた(自分も、大多数の人が抱く「今の世界がこのまま続く」という観念に抗してチャレンジを続けているため)。
例えば、こういったところだ。
・一種の「相転移」がイノベーションであるとすれば、イノベーションはガラクタと試行錯誤から生まれる。イノベーションを起こすにはその前の臨界状況の混沌が必要
・それは必ずしも「世のため人のため」を思って発生せず、個人的な興味から発生する

自分が自社に「人生はエンターテインメントだ」という意味の社名をつけていること。これまで自分の“面白い!”を起点に様々な試行錯誤を繰り返し、イノベーションを起こそうとしていること。そして現在にいたるまで泥沼とも思える混沌状況にあること。
「それはイノベーションを成立させる絶対条件です」「あなたはイノベーターなんですよ」
そう言ってもらっている気がした。

さて、上記のような“シンパシー”だけではなく、この本で興味がわいた点がある。それは、スケールフリー構造の「モテる人はモテるからモテる」という説明の箇所だ。

・バラバシ(※)は、簡単なルールでスケールフリーネットワークが作れることを発見しました。それは「新たに友達同士をつなぐ(リンクをつける)ときに、たくさん友達を持っている人(ノード)に高い確率でリンクを張る」というルールです。
・(中略)もしすでに持っている友達の数に関係なく、みんなが同じ確率でリンクを張ると、それはスケールフリーネットワークではなく、ランダムネットワークになるでしょう
・逆に、モテる人にリンクを張る度合いを上げるとスケールフリーネットワークが出現するのですが、その度合いをさらに上げると、一人のカリスマが世界を支配するような「独り勝ち」の状況が生まれます
・現実の世の中は、ランダムネットワークでもなければ「独り勝ち」でもありません。基本的には「モテる人がモテる」状況なのですが、そこにモテない人にリンクを張るような「気まぐれ」が適度に混ざっている状態です

※ ハンガリーの物理学者アルバート=ラズロ・バラバシ。彼らの研究グループがインターネットがルーターの故障に対してどれだけの体制を持つかを調べるコンピューター実験についての件

自分は今、SNSなどを利用したインフルエンサーマーケティングに非常に興味がある。一方で、今の世界の現状は、以前に比べて(小さな世界の話ではあるが)「独り勝ち」な人たち(ノード)が増えている気がする、と考えている。それは、ある種の社会問題化が懸念される危機的な状況の手前な気がしている。

実は、自分がいま提案しているとある「イノベーション」は、その一つの解決策となりうることだと思っている。
もちろん、そのためには広範にデータを集め、具体的にテーマ化して検証を行うような、アカデミックな動きが必要で、今の段階ではそんなことは全く考えられないのだが・・・それでも、そういう「社会問題の解決」という観点でも、今、自分が進めている“取り組み”でいろんな人を巻き込むことができたらなあ、と考える次第。

・・・いち「アホ」として、つぶやいてみた。。