先ほど、この記事を見てうなってしまった。う~む。

●フェイスブック、ターゲット広告見直し 差別批判受け (日記電子版 2019/3/20 7:20)
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO42691460Q9A320C1000000/?n_cid=BPRDS001

つまり、「郵便番号」や「男女の区分」で広告を見せたり見せなかったりできる機能を持つ広告媒体であるFacebookは「差別的で間違っている!」という講義が市民団体等から起こり、Facebookは「ごめんなさい。今後はこの仕組みをやめますね」と言っている、ということだろうか。
記事には「住宅売買や求人、信用貸しでの広告に関して」と記述されているから、この「やめますね」は仕組み(システム)そのものではなく、この3者だけは運用ルールとして「男女の区分」等で“抽出させない”、ということに過ぎないのだろうか。

おそらく後者なのだろうとは思うが・・・確かに、“こいつは金がないから広告なんか見せてもしょうがないだろう”などと企業に恣意的に選別されるのは、あまり気分がいいことではないし、それを差別的、ということにも一定の同意はする。だがもし、これでシステムそのものが問題視されるようなら、それこそFacebookに対する“いじめ”と言われても仕方ないのではないだろうか?

どう考えても、それって広告媒体であるFacebookの問題ではないよね。むしろ、例えば「保険会社は個人の遺伝子情報を保険販売の際に利用してはいけない」というような、利用者(広告主)側のモラルの問題、ではないのか。
だから、市民団体は、「Facebookけしからん!」ではなく、「広告主たちよ、Facebook利用の際はしっかりモラルを守れ!」と問題提起をするべき話だ。Facebookに苦情を言うとすれば、せいぜい、「Facebookよ、しっかり広告主を教育し、モラルを守らせるようにせよ」くらいかな(そういう意味では、今後、確かにルール化は必要だろう)。

今の「One to Oneマーケティング」の世界ではIT大手に限らずほとんどの企業は個人データを収集し、マーケティング活用している。企業で一元管理された情報をDMP(データ・マネジメント・プラットフォーム)などを介して、外部企業のデータとマッチさせてより精度の高いアプローチができるエコシステムが出来上がっている。
もし、「Facebookのような顧客選別を提供できるプラットフォームがあることが問題だ」などと言い出すと、現在のデジタルマーケティングそのものが否定されることになりかねない。さすがに、そんなばかげた話はなかろうが。

前々回の記事にも書いたが、今アメリカでFacebookのみ問題視されている現状には、「反トランプ陣営のプロパガンダ説」という話が出たりしている。個人的に陰謀論は大好きで楽しんでいるが、今のFacebookへの風当たりやメディア報道を見ると、これはマジだろ? と思ってしまうし、もしそうであればアメリカという国の、国民のなんと情けないことか(当然、こんな話はアメリカに限らず世界中にあるのだが)。

もちろん、そんな陰謀論とは全く違う背景として、GAFAにデータが集中して公正な競争を阻んでいる、という“事実”もあるため、多くは広告モデルを持つ巨大IT企業そのものの問題、としてこの“差別”問題は継続していくのかもしれない。

とはいえ、もし、媒体側が選別する仕組みをつくったことが差別、というのもおかしな話だ。だったらむしろ、選別される側の個人に実害の少ない「広告」などではなく、中国のアリババやテンセントの『ジーマ信用』など「社会信用スコア」の方を問題にしてほしいのだが。こちらは広告どころでなく、個人に対する企業活動そのものを制約するもので、個人データによる“人民選別”そのものだから。そっちがOKでただの広告に問題がある、というのは全く理解できない。
中国はやや行き過ぎているが、みずほ銀行がソフトバンクと組んでやろうとしていることも同じような方向だろうし、こっちの方はグローバルに問題意識の共有が必要な気がする。

一方で、昨今のEUのGDPRの流れもあって、個人側にデータ供給の主導権を持たせるべく仕組みづくりが検討されている。その一つが「情報銀行」で、これは個人がデータをPDS(パーソナル・データ・ストア)で管理することを前提に、情報銀行に信託し、適切に“運用”、つまり、正しく本人の意思に従った情報提供を行ってもらう、という仕組みだ。
とはいえ、すでに個人データを集めに集めているGAFAや日系含むIT企業の存在もあり、多くの人は情報銀行にあまり価値を感じていないとも聞く。

この記事に関しては、今のところあまり情報がないので、憶測は避けたいと思う。いずれにせよ、今のFacebookを取り巻く環境が周りに波及し、来るIoT時代に向けた“超データマーケティング時代”の到来をさえぎってしまうことになるのかどうか(いや、まさかね)、動向を注視しておこう。