正直「???」だ!

 

わかりづらいかもしれないが、こんな風に言い換えてみてはどうだろうか?

<A>被害者「お巡りさん、聞いて聞いて! “アメリカ産のチェリーパイ”を売ってる、っているお店で注文してお金を払ったら、出てきたのが“サクランボの食べかす”だったの。チョーむかつく!」

<B>被害者「しかも。ウチら、手持ちのお金がなかったから、お金の代わりに“お米”で代金払ったのね」

<C>警官「そりゃひどい! お米で決済させるなんて間違ってるよ!!」

 

アナタならこのおまわりさんにどう突っ込みますか?

「いやいやいや。問題はそこじゃないっしょ」くらいは普通に言うんじゃないでしょうかね。

問題は<A>詐欺被害、であって、<B>決済手段、じゃないでしょう?

 

「でも、事実、金融商品取引法っていう法律で、仮想通貨での決済についてのルールを決めてないんでしょ? そこが問題なんじゃないの?」

という声は上がるかもしれない。

でも、金融商品取引法は、その名の通り『金融商品』を『取引』することに関する法律だ。原則的には。そこでは、“何がこの法律でルール化される商品(=有価証券等)か?”についての定義はあるが、決済について事細かにルール化される筋合いのものではない。

「ソフトバンクの株を米俵10俵で買いたいんじゃが」

と、農家のおじいさんが証券会社窓口で問い合わしてきた際に準拠される法律は、少なくても【金商法】ではないはずだ。

(え~と。。厳密にどの法律が準拠されるかは聞かないでくださいな)

 

今回、決済手段として使われて問題になっているビットコインという仮想通貨は、日本においては【(改正)資金決済法】で「通貨に準ずるもの」と定義づけられている(この日本政府の先進的な判断が、当時、世界で称賛されたものだ)。

だから、例えば金融商品という商品の決済に仮想通貨が利用されることは、当然、想定されていることのはずだ。であれば、

「<A>セナーなる詐欺商品(スキーム)への出資の決済に、<B>仮想通貨が使用される」

ことについて、<B>仮想通貨が使用されることをのみことさら取り上げ、糾弾することは論理的と言えるのか? まったく“まちがってる!”論理構築ではないだろうか。

 

だから、この記事で警視庁の捜査幹部が言った「出資が全て仮想通貨であれば摘発は困難だった」、という問題は、確かに問題かもしれないが、それは【金商法】とは別のところにあるのだ、と理解すべきだ。

(じゃあ、誰がどんな意図で、こんな“ねじ曲がった”論理構築を行おう、というのか??)

 

【仮想通貨での送金と規制】

(自分は詳しくないが)このセナーはアメリカに所在するため、送金先は海外にあるようだ。

 

例えば、法定通貨を海外送金する場合、銀行などの金融機関で送金指示をする。金融機関であれば、正規の捜査や金融庁等の検査などで顧客の取引履歴を負うのはたやすい。外為法の規定で一定金額以上の海外送金は日銀に報告もされている。一定頻度の海外送金は犯罪収支移転防止(マネロン)法での報告義務もある。

 

では、仮想通貨はどうなのか?

現在、日本では仮想通貨取引所は登録制になっている(“みなし”と言われる取引所は、登録できなければ消えていく流れにある)。

だから、金融当局は、今後、金融機関と同じような報告ルールを登録業者に負わせ、国内顧客の口座を把握することで、国内居住者の海外送金について、ほぼ完全につかめることになる。

ブロックチェーンは公開された取引履歴で、一方でその取引が誰によるかを特定することが困難である、という匿名性こそが武器なのだが、当局は少なくとも、だれが口座を開いて、いくらの法定通貨を仮想通貨に換えたか、という履歴は追えるのだ。

しかし、逆に言うと、終える履歴はとりあえずそこまで、とも言える。

 

銀行口座にある現金(通貨)を引き出して財布に入れるように、顧客は仮想通貨を“ウォレット”と呼ばれる個人の財布に振り替えることができる。そして、財布を開けて物を買う(決済する)ように、顧客は“通貨に準ずる”決済手段として、物を買ったり、友人に割り勘の飲み代を払ったりすることができる。

そして、仮想通貨であることで、物理的・地理的制約がなく、直接、海外の別の人の口座に仮想通貨を送金することもできる(これがよく「?」となるところだが、単純に便利だなあと思う)。

その3